「加藤康之の投資講座ー入門編」スマートベータとは何か?で学んだこと


6月11日(月)に、京都大学経営管理大学院 ファイナンス(お金のデザイン)寄付講座 第4回「加藤康之の投資講座-入門編」-スマートベータとは何か?-に出席してきました。その概要についてお伝えさせていただきます。

第4回目となる「加藤康之の投資講座-入門編」では、第1回「投資理論を資産運用に役立てる」、第2回「なぜパッシブ運用なのか?」、第3回「為替リスクについて学ぶ」に続き、「スマートベータとは何か?」をテーマとして講義が行われました。

スマートベータとは何か?

冒頭、加藤教授より当日のポイントとして、以下が挙げられました。

  • ベンチマークインデックスの一つ。TOPIXのように時価総額加重をベースにした市場全体を表そうというインデックスではなく、特定のファクターに着目した非時価総額加重のインデックス
  • 運用の評価するためのものというより、当該インデックスそのものを運用ポートフォリオとして使用する場合がほとんど
  • 機関投資家*やETF(上場投資信託)による導入が増えている

*一般的には、保険会社、投資信託、信託銀行、投資顧問会社、年金基金などの法人で、大きな資金を使って株式や債券で運用を行う、大口投資家のことをいいます。

主な論点に関して、当日の模様をまとめさせていただきます。

ファクターに着目したインデックスとは?

スマートベータという言葉は「スマート」と「ベータ」を繋げたものとなります。

加藤教授によれば、

スマートは賢いという意味です。また、ベータについては、TOPIXやS&P500のような市場ポートフォリオへのエクスポージャーを意味しています。市場ポートフォリオとは、市場で取引されている幅広い銘柄を、各銘柄の市場ポートフォリオに対する時価総額ウェイトで組入れを行ったポートフォリオのことです。それをインデックス化したものが時価総額加重のインデックスになります。
スマートベータとは、賢いインデックスということになります。すなわち、スマートベータは一般的なインデックス運用の時価総額加重という考え方に捉われないところにあるといえます。具体的にはどういうことでしょうか?

それは、時価総額加重という点に注目するのではなく、リスクファクターに着目してインデックスを構築することという解説がされました。

ファクターとは、全ての市場ポートフォリオの価格変動に影響を及ぼす、共通の“要因”。つまり、すべての市場あるいはポートフォリオは、ファクターの影響をすべからく受けていると考えます。その結果ファクターが、リターンの“源泉”となる訳です。言い換えますと、ファクターによるリターンを合計したものが市場のリターンになります。
食事で例えると、ファクターとは、食事を構成している、タンパク質、ビタミン、ミネラル等の目には見えない栄養素にあたります。
一方、個別銘柄は、ステーキやサラダ、コーンスープ等の個々の目の前に見える料理をさします。
ステーキ定食を食べるということは、ステーキ・サラダ・コーンスープ・お新香を食べることになりますが、別の見方からすると、タンパク質・ビタミン・ミネラル・カルシウムを食べたともいえるわけです。
ファクターは“栄養素”で、個別銘柄は“個々の料理”を指し、この例でいうと“ステーキ定食”がポートフォリオになるということです。

運用ポートフォリオそのものとしての考え方

加藤教授からは、

スマートベータでは、その超過リターンがどのファクターのリターンで構成されているのかということが分かりやすくなっています。ファクターベースの投資は、そのポートフォリオにどのような特性を持たせるかという、ポートフォリオ構築をしたり、そのリスク特性を理解したりする上で極めて重要な利点です。科学的なアプローチを採用する機関投資家はこの透明性をとても重要視しています。
スマートベータによる超過リターンは、これまでも多くの学術研究で実証がなされて認知されてきたものです。しかしながら、実は、その超過リターンの要因については様々な学説があり、まだ決着しているとはいえません。

なぜファクターにリターンがあるのか、大きくは、二つの説に分かれています。
・リスクプレミアム説
 時価総額加重の市場とは異なるリスクをとるため
 (異なるリスクに対する代償)
・アノーマリー説
 市場に非効率性が存在するため

という解説がなされました。

機関投資家による導入も増えてきている

最後に、加藤教授より、スマートベータの位置付けと機関投資家の動きへの考察も解説されました。

スマートベータ戦略の位置づけは、パッシブ運用とアクティブ運用の中間となるものです。スマートベータはパッシブ運用とは異なり、市場と異なるファクターに着目して、超過リターンの取得を目的にしています。
市場のリターンのなかで、ファクターリターンで説明できない残りのリターンがアルファです。アルファを追求するアクティブ運用とも異なり、スマートベータの超過リターンはリスクプレミアムなど理論的に実証されたものです。スマートベータはルールに基づいて特定のファクターに運用するため、時価総額加重というルールに則った運用という意味では、ルールベースの運用プロセスという観点から、パッシブ運用の色彩もあるといえます。
スマートベータは、アクティブ運用とパッシブ運用の良いとこ取りをしているといえます。実際、機関投資家において、既存のアクティブ運用やパッシブ運用の一部を、スマートベータに置き換えていく動きが大きく進展しているといえます。

市場のリターン
=各種ファクター・リターンの合計+アルファ(ファクターリターンで説明できないリターン=運用者の純粋な運用能力)
に区分できると考えられます。

市場リターンの大半はファクターリターンで説明可能とされるなか、ファンドマネージャーに高い報酬を払ってまでアルファを期待するのか、あるいは短期的には変動はあるかもしれないが、長期的にアルファではない超過収益を追求するマネージャーを低廉な運用報酬で採用するのかという判断となります。
高い運用報酬を払っていたとしても、アクティブマネージャーが長期に安定してアルファを出していないのではないかとのことから、機関投資家は、アクティブ運用からスマートベータに乗り換える動きが顕在化していると考えられています。

お金のデザインとスマートベータ

スマートベータによる運用の採用を検討していた、日本の機関投資家からの引き合いをいただき、お金のデザインでは、2018年1月に、機関投資家向けに新しくチャネルブランド 「ARCA GLOBAL ASSET(アルカ グローバル アセット)」を立ち上げました。その経緯や内容については、以下のブログをご参照いただければと思います。

blog.money-design.com

なお、次回の「加藤康之の投資講座-入門編」第5回は、9月12日(水)を予定しております。詳細は改めてご案内いたしますが、投資や資産運用を考えるきっかけとして、ご予定にお組み入れいただけると幸いです。

※本稿において、講師の発言として記載された意見・見解は、講師個人のものであり、株式会社お金のデザインの公式見解ではありません。

執筆者

得意分野:投資理論・金融工学

加藤康之

  • 投資
  • 年金

お金のデザイン研究所所長、首都大学東京特任教授、京都大学客員教授。東京工業大学修士、京都大学博士。(株)野村総合研究所、野村證券(株)、同社執行役、京都大学教授などを経て現職。専門は投資理論・金融工学。他に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)経営委員、証券アナリストジャーナル編集委員などを兼務。