子供のお小遣いは、何歳から、いくら、どんな風に渡すのが良いのでしょうか。
お小遣いは子供がお金について考える良い機会なので、せっかくなら金銭感覚が身につくようにしたいと考える人も多いはず。
しかし、「具体的にどんなことに気をつければいいのかわからない」「お金のことはママ友にも聞きにくい」という人もいるのでは。
そこで、今回は金銭教育セミナーを全国で展開する『FPmama Friends』の代表兼FPの柴田さんに、子供のためになるお小遣いのあげ方を教えてもらいました。
また、金銭教育についてもインタビュー。
「お金の教育は金銭感覚だけでなく、子供の自己肯定感や自立心も育む」という柴田さん。
3人のお子さんを持つ柴田さんが実践している教育方法もたっぷり教えてもらいました。
【柴田時子】
FPのママたちが子供の金銭教育セミナーを全国で展開する『FPmama Friends』代表。25歳で難病「多発性硬化症」と診断、2度の離婚を経験したことから、お金の重要性を痛感し、猛勉強してFPに転身。学校や企業でセミナーを行うほか、新聞コラム執筆やラジオパーソナリティーを務めるなど幅広く活動。3人の子供を育てるシングルマザー。
子供のお小遣いは、何歳から、いくら、どう渡せばいい?
編集部:金融広報中央委員会の「子どものくらしとお金に関する調査」によると、小学校低学年から約72%の子供がお小遣いをもらっていて、小学生のお小遣いの平均は1000円でした(※)。
お小遣いは小学1年生くらいから渡せば良いのでしょうか?
(※)子どものくらしとお金に関する調査2015
柴田さん:いえ、お小遣いは4〜5歳からあげてください。
編集部:え!幼稚園の年中、年長ですよね? 早すぎる気がしますが…。
柴田さん:そんなことはありません。
子供って4歳くらいからお金に興味を持ち始めるんです。
ごっこ遊びで「これください」「はい、100円です」なんてやりとりしてますよね。
興味を持ち始めたときにお小遣いをあげると、お金への関心がより高まります。
編集部:なるほど、好奇心を育てるんですね。
では、幼稚園児のお小遣いはいくらぐらいが良いんでしょうか?
柴田さん:我が家のおこづかい金額をご参考までにお伝えすると…
幼稚園児はお金が増えていく感覚を身につけるため、週に1回20円を渡して、月80円くらいに。
小学生以降は月に学年×100円、中学生は学年×1000円、高校生は一律5000円です。
編集部:高校生までは年々お小遣いが増えていく金額設定ですね。
柴田さん:大人も毎年少しでもお給料が増えたら嬉しいじゃないですか。
子供も同じです。
また、兄弟がいる場合は学年で金額が違っていた方が子供も納得しやすいんです。
ただ高校生は自分でアルバイトができますし、その頃までにはお小遣いで金銭感覚がある程度身についているので一律にしています。
定額制やご褒美制、報酬制…お小遣いの渡し方は?
編集部:お小遣いは毎月渡す家庭もあれば、テストで良い点を取ったらもらえるご褒美制、お手伝いをしたらもらえる報酬制などがありますが、どんな渡し方が良いんですか?
柴田さん:お小遣い教育に正解はなく、ご家庭の考え方や子供の性格によってさまざまですね。
我が家は以前は報酬制にしていたのですが、お小遣い目的に必死でお手伝いすることを探すようになっていたので、月に一回の定額制に変更しました。
今は毎月決まった日の24時間以内に「お小遣いをください」と言いに来ないと渡さないルール。
理由はお小遣いは当たり前にもらえるものではなく、家庭の中のお金をいただくものだから。
子供たちは何度かお小遣いをもらい損ねているので、忘れないようにカレンダーに印をつけています(笑)。
定額制の方がうちの子供たちには合っているようで、毎月計画的に使っています。
子供の性格によって報酬制やご褒美制の方がうまくいくケースもあるので、一概に「この渡し方が絶対に良い」とは言えません。
大切なことは、子供と話し合うこと。
親が勝手にルールを決めても子供が納得していなかったらうまくいきませんから、話し合って子供に選ばせてみましょう。
まだわからない場合は、とりあえず定額制で始めると良いと思います。
金銭感覚だけじゃない!自己肯定感も育むお金教育の7つのポイント
編集部:日本では金融教育がほとんどされていない上に、お金の話は人前でしにくいため、お金の教育といってもどうすればいいのかわからない人は多いと思います。
具体的にどのようにすれば良いのでしょうか?
柴田さん:お金の教育は、貯金上手になることや投資の知識をつけることが目的ではなく、どうお金と付き合っていくのか、どう自立するのかが本質だと思います。
正しい金銭感覚と自立心を身につけるために、私が実践しているポイントは7つです。
①お小遣い帳をつける
②ニーズ(必要)・ウォンツ(欲しい)を認識する
③親の気分でお金をあげない
④お金の話は家族で積極的にする
⑤少額で投資を始める
⑥お小遣いで寄付をする
⑦親はお小遣いの使い方に口出ししない
一つずつ解説していきましょう。
①お小遣い帳をつけてお金の使い方を振り返る
柴田さん:お小遣いを渡し始めたら、必ずお小遣い帳を記入するようにしましょう。
子供が自分で書けない場合は、親が一緒に書いてあげてください。
お金が増えたり減ったりするのを目で見えるようにすることで、金銭感覚が養われます。
これからキャッシュレス時代を生きていくためには大切な感覚だと言えます。
『FPmama Friends』のママFPのお子さん(5歳)のお小遣い帳。
金銭感覚が身についていないうちは、お小遣いを渡してもすぐに使い切ってしまうこともあるでしょう。
でも、お小遣い帳をつけていれば、「どうしてだろう?」と振り返ることができるので自然とお金の使い方を考えるようになります。
さらに、子供の価値観がわかることもお小遣い帳をつけるメリット。
うちの息子の場合は、ゲームが好きでお小遣い帳にはゲームの購入履歴がずらり。
将来はゲーム関連の仕事につきたいと話しているくらい。
親が子供のことを、子供が自分のことを理解するのにも役立つでしょう。
②ニーズ・ウォンツを認識すると「買って買って」と欲しがらなくなる
柴田さん:金銭感覚を身につけるためには、ニーズとウォンツを認識することがとても大切。
何にお金を使うべきか優先順位をつけることができるからです。
ないと困るもの(ニーズ)は親が買い、あったら嬉しいもの(ウォンツ)はなるべくお小遣いで買わせるようにしましょう。
日頃からニーズとウォンツを考える癖をつけると、「買って買って」と欲しがることもなくなります。
実際、我が家ではこんなことがありました。
息子が小学2年生のとき下敷きが割れてしまい、勉強するときに必要なものなので買いに行ったのですが、息子は値段の高いキャラクターの下敷きを欲しがりました。
でも、下敷き自体は安く買えますから「それはニーズではなくて、ウォンツだよね?」と言うと、息子は「じゃあ、差額分はお小遣いから払う」と言ったんです(笑)。
親に反対されて買えないより、お小遣いを使って好きなものが買えるのが良いと、本人も言っていました。
ニーズとウォンツを理解しているから、子供も納得して考えられるようになるんですね。
③子供が期待するので、親の気分でお金をあげるのはNG
柴田さん:お小遣いをどう渡すかを決めたら、基本的にはそれを徹底してください。
親の気分でお小遣いを渡すのはやめましょう。
「子供が物を欲しがって言うことを聞かない」と相談をされることがありますが、そういう場合は親が理由なく買ってあげたり、お金をあげているケースがほとんど。
もちろん時々なら良いのですが、何度もやっていると、「ねだれば買ってもらえる」と、特に小さい子は経験として覚えてしまいます。
もしお小遣いが足りないようであれば、お年玉をただ貯金しておくのではなく、一部を年に一度授業料としてお小遣いにプラスしてあげるのもおすすめ。
元々本人がもらったものですし、限られたなかでやりくりを覚えさせましょう。
④お金の話は隠さない!家族で積極的に話して金銭感覚を磨こう
柴田さん:日本では人前でお金の話をするのは良くないことという風潮がありますが、私は積極的にした方が良いと思っています。
自然と相場観や倹約の意識が身につくからです。
たとえば、「電気代がもったいないから付けっ放しにするのはやめなさい」と言っても子供はピンときません。
それより電気代の請求書を見せて、「今月は先月より高かったね。どうしてだろう?」と話し合う。
そうすると子供は自分で考えて行動するようになりますし、お金に敏感になります。
我が家はお金の話をよくしているので、子供たちも「ペットボトルのお茶を買うより、家でお茶を作って持参した方が100円以上節約になる」など自然と倹約を意識するようになりました。
大学生の娘は1回の授業料を計算して、「こんなに払ってるんだから毎回集中して聞かなきゃもったいない」とも言っています(笑)。
⑤これからの時代、資産運用は必須。少額で投資を始めよう
柴田さん:海外では8〜9歳頃から金銭教育が始まりますが、日本はお金の教育自体ほとんどありませんよね。
でも、実は子供ってお金や投資に興味を持っていると思います。
中学生の息子も仮想通貨に興味を持っていますし、以前中学3年生向けにお金のセミナーをした際も、終わった後に数人の生徒が追いかけてきて「もっと投資について聞きたかった」と言っていました。
一方、2022年度から高校の家庭科の授業で家計管理や投資などお金の授業が始まりますが、私がセミナーで80名ほどの先生方に「投資をやっている方はいますか?」と聞いたら一人もいませんでした。
自分がやっていないと、教えることは難しいもの。
子供に金銭教育をしたいなら、まずは証券口座を開設して、子供と一緒に勉強する気持ちで少額でトライしてみると良いと思います。
親が投資している金融商品の利率を真似して、お小遣いで“つもり投資”するのもおすすめ。
今の時代、銀行に預けていてもお金は増えません。
それなら預貯金より、投資をしてみたり、変額保険やドル建て保険に入って、その上がり下がりを子供と一緒に見てみたりした方がずっと有意義。
お金を増やせる可能性も高いですし、子供への教育投資にもなります。
株価の動きを見て、その背景を想像して家族でディスカッションすれば世の中への関心も高まるでしょう。
⑥お小遣いで寄付をしてお金の可能性を知る
柴田さん:お小遣いで欲しいものを買うのも良いですが、寄付をすすめてみるのも良いでしょう。「自分のお金で誰かを助けることができる」という経験は、お金の可能性を知るきっかけになるはず。
自分のためだけではなく、誰かのためになる使い方もできることを体感することで、お金の使い方の幅が広がります。
⑦親は子供のお小遣いの使い方に絶対口出ししない
柴田さん:お小遣いの使い方を見て、「また無駄遣いしてる」「何でそんな物を買ったの」など口出ししてしまうことはありませんか?
心配なのはわかりますが、お小遣いの使い道は信じて、子供に任せましょう。
あれこれ言われたら子供だって嫌な気持ちになりますし、自信をなくしてしまいます。
そして、「お母さんにいろいろ言われるから買ったことは秘密にしておこう」と隠すようになり、信頼関係が築けなくなってしまうんです。
どう使っても否定せず、「こういうのが好きなんだね」「良い買い物をしたね」など子供の価値観を尊重するような言葉をかけてください。
無駄遣いだとしても、小さいうちのお小遣いは少額ですし、失敗も子供には大切な学び。
自分で気がつくように、「お母さんもこの服可愛いと思って買ったけど、全然着なくて失敗したよ」など経験談を話してあげると良いですよ。
お小遣いの使い方は子供に任せて尊重する。
そうすると、子供は「信頼されている」と感じて自信がつき、自己肯定感が高まります。
実際、うちの子供は自己肯定感が高過ぎるほど(笑)。
子供たちはお小遣いで何を買ったか報告する必要もなければ「買ってもいいか?」と許可を取る必要もありません。
「お小遣いを自由に使えるのは、お母さんに信頼してもらってるから」と子供たちも理解しています。
シングルマザー、難病を経験したからこそ子供には「魚を与えるのではなく、取り方を教えたい」
編集部:柴田さんが子供に金銭教育をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
柴田さん:24歳のとき、1歳の娘を連れてシングルマザーになったんです。
しかも、2人目を妊娠中で、なんと妊娠9か月のときに。
編集部:え、そんなことが!
柴田さん:なかなか壮絶ですよね(笑)。
無事出産しましたが、その後「多発性硬化症」という難病になったんです。
長期間の入院な上に車椅子生活も経験したりして、子供に母乳をあげたくてもあげられなかったのが何より辛かったですね。
働けないからお金もなくて、銀行の残高が5万円切ったこともありました。
リハビリを経てなんとか退院したものの、再発する可能性もあるので、当時保険に入っていなかった私は慌てて保険について調べました。
いろいろ調べているうちに「知らないと損することがいっぱいある」と気づき、一人で子育てしながら時間を見つけては猛勉強して、FP資格を取得しました。
そんな状況だったので、「働けなくなったら、死んだらどうしよう」と考えるように。
だから、子供たちに魚を与えるより、魚の取り方を教えなきゃと思って、お金の使い方、殖やし方、守り方を勉強しながら教えることにしたんです。
お金の使い方がわかると「早く働きたい」という自立心も育まれる
編集部:実際お子さんたちは素晴らしい金銭感覚が身についていますよね。
さらに自己肯定感も高まるとは、もはやお金だけの教育ではないですね。
柴田さん:そうですね。子供たちはやりたいことを見つけるのが早かったのですが、これも金銭教育のおかげだと思っています。
編集部:そんな効果も!?
柴田さん:お金を持つ自由を実感しているからだと思います。
他の家庭では「ゲームが欲しい」と言っても「誕生日まで待ちなさい」などと言われるようですが、我が家はお小遣いで買うならいつでも自分の欲しい物を買うことができます。
だから、自分は何が好きなのか早いうちから自覚することができますし、お金を自由に使える良さも理解して、自然と好きなことで稼げる仕事を考えるようになっていました。
進路相談のときは学校より、まず職業を決めてそれを叶えるための学校選びを考えていましたね。
編集部:好きなことを仕事にするのは憧れますが、一人で生きていくとなるとそれだけでは厳しいこともありますよね。
仕事内容もお金も納得できる選択肢を早くから考えられるのはすごく良いことですね。
柴田さん:子供たちは「早く働きたい」と言っています。
働いたら自由に使えるお金が増えるわけですから、どんな風に使おうか楽しみみたい(笑)。
編集部:自立心も育まれるんですね。
私の知人はリボ払いで返済が終わらないと嘆いていましたが、お子さんはその心配は皆無ですね…。
柴田さん:だからお金の教育は早い方が良いんです。
理想は小学生までにある程度の金銭感覚を身につけること。
子供のうちは失敗しても大したことありませんが、大人になってからの失敗は大変ですからね。
ただし、完璧を求めないこと。
お小遣いのルールを決めても「絶対こうしなきゃ」「こうするべき」と思う必要はなく、子供と話しながら子供が納得する形にどんどん変えてください。
お小遣いをはじめ、教育に正解はありません。
大事なことは、ルールより会話。
子供とたくさん話をして、親も一緒に学びながらやれば良いんです。
編集部:困ったことがあれば、柴田さんが代表を務めるFPmama Friendsに相談することもできますよね。
柴田さん:もちろんです!
現在FPmama FriendsにはママFPが20名以上在籍しているので、いろんな考え方を聞くことができます。
ちょっとわからないことを気軽に相談できる「ママ友達」だと思ってください。
また、子供のお小遣い以外にも、家計や貯蓄、保険、老後資金などお金の悩みはいろいろありますよね。
そんな方は一人で悩まず、気軽にご相談していただきたいなと思います。
一緒にお金に向き合い、不安を解消していきましょう!
お金の不安や悩みは専門家にチャット相談してみよう
「子供とたくさん会話をしてください」
取材中、柴田さんの口からはこの言葉が何度も出てきました。
お金の教育というと、親が教えてあげるものなんて思いがちですが、大事なことはお金にも子供にも向き合うこと。
柴田さんのお話を参考にしながら、お小遣いやお金のこと、子供と一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
困ったときには、豊富な経験と的確なコメントで柴田さんがアドバイスしてくれます。
「お金の健康診断」なら匿名かつ無料でチャット相談ができるので、気軽にご利用ください。

得意分野:教育資金/保険/資産運用/老後資金/相続/投資/お金の勉強
柴田 時子
コメント
中立ではない「あなた寄りのFP」柴田時子です。
25歳で難病宣告され、2度の離婚を経験しました。
3人の子どもを育てながら、お金がない・時間がない!からこそ、効率よく猛勉強して入退院を繰り返しながらFPを取りました。
どん底を経験したからこそ、シャンパンタワーのようにまずは自分を満たし、乗り越えてきた経験で周りの人を幸せにする仕事を、生きがいにしています。
過去に車椅子になり後悔したので「動ける間に即行動!」
時間も大切に生きています。
「時は金なり」で時間を味方につけた資産運用など、学校や企業でセミナーをしています。
【実績】新聞コラム掲載・YouTube配信・ラジオパーソナリティー・金銭教育コミュニティ運営・2011年よりセミナー多数(日経マネー、証券業協会、金融庁、教育委員会など)