【執筆者:西出 滋】
銀行、証券・投資顧問、保険と金融3業態すべてを経験した、金融業界25年のFP。外資系投信投資顧問とヘッジファンドで年金運用のファンドマネージャーを歴任しており、特に資産形成・資産運用の相談を専門としている。
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■ 人口予測から考えると新興国への投資は魅力的に見える
ちなみにこの写真は、無料画像素材にあった、インドネシアジャカルタの写真です。
以前、トップダウンアプローチによる投資先選定をする際に重要な、各国の人口ボーナス終了年、老年化指数(いずれも国連予想)を紹介しました。
皆さんも有望な投資先はどこかを考えたことと思います。
多くの予測資料では、2050年に向けて世界経済の成長を牽引するのは現在の先進7カ国G7ではなく主要新興国E7だと予想されています。
果たして人口動態の若い新興国への投資は報われるのでしょうか。
E7とは
主要先進国のG7に対して成長著しい新興・途上国
(emerging market and developing economies)の頭文字Eをとって
7カ国をピックアップしたものです。
G7 カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国
E7 ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、トルコ
■ 調査レポートでも新興7カ国(E7)の成長は魅力的
世界的なコンサルティングファームであるPwC(プライスウォーターハウスクーパース)が発刊したレポートによると次のような予想がなされています。
調査レポート
「長期的な経済展望:世界の経済秩序は2050年までにどう変化するのか?(The long view: how will the global economic order change by 2050?)」
レポート要旨
____________________________
■世界経済は2016年から2050年までに年平均実質成長率約2.5%のペースで成長
■経済規模は2042年までに倍増(2015年と比較して)
■成長の主なけん引役となるのは 新興市場と開発途上国
■新興7カ国(E7)のブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、トルコは今後34年間、年平均3.5%のペースで成長
■先進7カ国(G7)のカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の成長は、わずか1.6%程度にとどまる
■E7の世界GDPにおけるシェアは2050年までに約50%まで上昇する一方で、G7のシェアはわずか20%強にまで低下する可能性
____________________________
他の調査機関から出ているレポートも細かな差異はあるものの、概ね同様の予想となっています。
先進国と比較して新興国が高成長であることは、多くのレポートが予想している通り現実になる可能性が高いと思われます。
そうであれば先に挙げたE7へパッケージ(まとめ)投資を実施すれば成果が得られるのは間違いなさそうです。
■ しかし、新興国への投資は、簡単ではない!成長プロセスから、理解する
新興国投資は簡単なものではありません。高いリターンが得られる可能性がある代わりにリスクも高い(ハイリスク・ハイリターン)投資です。
それでは国がどのように成長していくのか、成長のプロセスを確認してみましょう。
Step1 工業化
先進国の多くは、その過程において工業化によって高い成長を実現してきました。
1830−1870年代に「世界の工場」と呼ばれたイギリス、その後のアメリカ、日本がそうです。
また、現在、中進国(世銀定義)にまで成長してきた中国も同様の過程にあります。
新興・途上国が工業化していくためには次の2つが必要です。
①豊富かつ低廉な労働力
②外国(先進国)からの投資
新興・途上国には資本(お金)の蓄積がないため、工業化によって経済成長しようにも、自国に資本がありません。
そのため、豊富かつ低廉な労働力を有しても工業化は難しく、海外からの投資を呼び込む必要があります。
この2つが揃って工業化が進むと、工業製品を輸出して、海外からお金を稼ぐことが可能になります。
Step2 消費市場の拡大
工業化に成功すると経済的に豊かになり、小売業を始めとしたサービス業が発展します。
また、生活必需品以外の嗜好品も消費されるようになり自国の消費市場(内需)が拡大します。
ただしこの段階ではまだ外資系企業がメインであり、地場企業の技術レベルは高くありません。
Step3 地場企業の育成(技術力・生産性の向上)
地場企業自らが部品を作成したり高品質製品を生産できるようになると、「中進国の罠を脱する」ことが可能になります。
そして、革新的な技術を用いて新しい製品やサービスを開発できるようになると、さらに上の段階へとステップアップしていきます。
Step2からStep3への移行できるかどうかがカギ!
Step2からStep3への移行に大きな壁があります。
海外資本をうまく活用し、工業化に成功してもStep3(高所得国・先進国)へ必ずしも成長できるわけではありません。
成長段階で技術力・生産性の向上がないと、賃金ばかりが上昇し、品質の割には輸出価格が高くなってしまいます。
その結果、輸出競争力が減退し、経済成長が鈍化します。
この様に新興国が一定規模(中所得)にまで経済発展した後、成長が鈍化し、高所得国の水準に届かなくなる状態を「中進国(中所得国)の罠」といいます。
■ 発展途上国にも分類がある
世界銀行による分類では、発展途上国は、GNI(1人あたりの国民所得)によって
「低所得国」
「下位中所得国」
「上位中所得国」
の3つに分かれており、その基準は次の通りです。(2020年3月13日現在)
低所得国
GNI 1,005米ドル(約11万円)以下
下位中所得国
GNI 1,006米ドルから3,955米ドル(約43万5,000円)
上位中所得国
GNI 3,996米ドルから12,235米ドル(約134万5,000円)
世界銀行によって「高所得国」以外に分類される国々が発展途上国と分類される基準となります。
高所得国
GNI 12,235米以上
世銀のデータで各国のGNI(1人あたりの国民所得)がいくらなのか確認してみてください。
各国の一人当たりGNI(国民所得)、アトラス方式(世銀データ、現在の米ドル)
人口ボーナス期の最中にあり、老年化指数が将来も低レベルに留まる新興国はたくさんあります。
しかし、国民所得が順調に高所得国に成長していく国はどこか。多くの不確定要素を含んだ投資となり、ハイリスクなものになるでしょう。
投資先のコアは先進国とし、新興国投資はサテライト的なものとするのが多くの方には適しているでしょう。
最後に、主要国の人口ボーナス終了年、老年化指数(2015年、2050年)を再掲します。
参考:主要国の「人口ボーナス終了年」と「老年化指数」
国名 人口ボーナス終了年、 老年化指数2015年→2050年
日本 1992年 老年化指数2.1→2.9
米国 2008年 老年化指数0.8→1.2
フランス 1989年 老年化指数 1.0→1.5
英国 2007年 老年化指数1.0→1.5
ドイツ 1986年 老年化指数1.7→2.6
ロシア 2009年 老年化指数0.8→1.2
中国 2010年 老年化指数0.5→1.6
韓国 2020年 老年化指数0.5→1.1
シンガポール 2012年 老年化指数0.7→2.5
タイ 2014年 老年化指数0.6→2.4
ベトナム 2016年 老年化指数0.3→1.6
インドネシア 2026年 老年化指数0.2→0.8
マレーシア 2040年 老年化指数0.2→1.0
ミャンマー 2029年 老年化指数0.2→0.9
フィリピン 2050年 老年化指数0.1→0.4
バングラデシュ 2032年 老年化指数0.2→0.9
インド 2040年 老年化指数0.2→0.6
パキスタン 2047年 老年化指数0.1→0.5
トルコ 2022年 老年化指数0.3→1.3
イラン 2031年 老年化指数0.2→1.3
サウジアラビア 2034年 老年化指数0.1→1.2
メキシコ 2027年 老年化指数0.2→1.2
ブラジル 2022年 老年化指数0.3→1.5
エジプト 2041年 老年化指数0.2→0.6
南アフリカ共和国 2044年 老年化指数0.2→0.5
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