執筆者: 西出 滋 @元ファンドマネージャー
得意分野: 資産運用、ライフプランニング、教育資金、保険、住宅ローン、老後資金、相続、投資 /お金の勉強
- ■ 40代は資産形成に適している
- ■ 資産形成の目的と目標の違い
- ■ 前提条件は崩れている
- ■ 従来の資産形成の常識
- ■ これからの資産形成新常識
- ■ 40代の資産運用・資産形成はどうしていけばいいのか
- ■ まとめ
- ■ どんなことでもOK!お金のプロに相談しよう
それでは、今日も、資産運用に役立つ内容を発信していきます。
今回は、40代の資産形成方法について今までとは違った考え方が必要だということに関して紹介します。
■ 40代は資産形成に適している
40代は一般的に、最も出費が多く資産形成が思うように進まない年代だと言われています。
お子さんがいらっしゃるご家庭であれば、教育費が嵩んでくるタイミングでしょう。ご夫婦お二人のご家庭や単身の方ではそろそろ住宅購入を考える時期かもしれません。
また、親御さんが高齢になってきているため、セカンドライフに対して真剣に考え始めている方も多いのではないでしょうか。
大きな資金が必要になるライフイベントが目白押しで資産形成どころではないとお考えかもしれませんね。
実は40代は資産形成に適しているんです。
それは、将来について真剣に考えるので、明確な目的を持って資産形成に向き合うことができるからなんです。
資産運用・資産形成はこれからだという方は、ライフプランニングによって目的(目標ではないです)を明確化し、積極的に取り組みましょう。
すでに実施されている方は、従来とは前提条件が変わってきているので、目的の実現に沿った内容になっているか見直してみましょう。
ライフイベントの確認
- 自分のライフイベント:住宅購入、出産、車購入、退職、リフォーム、施設入所など
- お子様のライフイベント:入園・入学、結婚、住宅購入など
- 親御さんのライフイベント:同居、介護、施設入所など
皆さんの今後予想されるライフイベントを書き出してみて、どのくらいお金が必用なのか確認してみましょう。
盲点があるとせっかくの努力が報われないので、多くのアドバイス経験があるファイナンシャル・プランナーに相談してみるのも良いですよ。
■ 資産形成の目的と目標の違い
皆さんの資産形成を成功させるために、目的と目標をしっかりと区別しましょう。目標とは、目的を達成するためのステップです。
目的を達成するために目指すべき行動や、設定した途中経過、必用な成果が目標となります。
目的が無い目標、言い換えると目標が目的化してしまうと目標達成は困難です。
例えば、
- 「偏差値の高い大学に入る」
- 「大企業に入社する」
- 「1000万円の金融資産を形成する」
などは、どんな目的のための目標なのか、目標達成のその後にどんな未来があるのかが明確でないと、途中で挫折してしまったり、達成しても燃え尽きてしまうこともあります。
資産運用や資産形成に関してのメディアや記事の中には、
- 「まずは100万円を目標に積み立てましょう!」
- 「老後のために3000万円貯めましょう!」
などと書かれているものがあります。
前者についてはなんのための100万円か不明確なので、途中でやめてしまうケースがでてきます。
後者は“老後のために”とあるから目的なんじゃないの?と思われるかもしれませんね。“老後のために”が目的になるには“どんな老後か”がポイントになります。
- 「都心で便利な生活を謳歌したい」
- 「郷里や田舎でゆったりと過ごしたい」
- 「暖かい海外に移住したい」
- 「ペットに囲まれて生活したい」
など、自分が思い描くセカンドライフを明確にすることで目的になります。
■ 前提条件は崩れている
長寿化は急速に進んでいます。みなさん90歳で存命している確率をご存知ですか?
最新の生命表(平成28年版)によると、男性の4人に1人、女性ではなんと2人に1人が90歳を迎えています。
100歳近い親族がいる方も今や珍しくないですよね。人生100年時代はすぐそこまで来ているといっても過言ではないでしょう。
人口減少経済に突入していることもこれまでとは異なります。
日本の総人口は2008年の1億2,808万人(※1)をピークに減少傾向になっており、2040年には18歳以上60歳未満の人口が約4,900万人、60歳以上の人口が4,700万人とほぼ拮抗すると見込まれています(※2)。
日本の年金制度は修正賦課方式と言われ、現役世代の年金保険料が年金世代の受給に充てられているため、
制度を維持するためには以下の4つの選択肢のどれか、もしくは組み合わせが必用になります。
- (ⅰ)平均年金月額(受給)の引下げ
- (ⅱ)支給開始年齢の引上げ
- (ⅲ)年金保険料(率)の引上げ
- (ⅳ)国民総生産の増大政策
いたずらに不安を煽るつもりはないのですが、(ⅳ)国民総生産の増大政策はコントロールできるものではありませんね。
しかも人口が減少する社会では、国民総生産の増大はかなり困難でしょう。年金制度を持続させるには(ⅰ)平均年金月額(受給)の引下げ、(ⅱ)支給開始年齢の引上げ、(ⅲ)年金保険料の引上げの実施が必要になってしまうんです。
(ⅰ)はマクロ経済スライドによって事実上導入され、(ⅱ)、(ⅲ)はすでに過去に実施されています。今後も平均年金月額の引き下げや、支給開始年齢の引上げは避けられないのではないでしょうか。
厚生労働省によると、経済環境を保守的にみた場合の所得代替率は40%程度にまで低下すると試算されています
(※1)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200524&tstat=000000090001&cycle=0&tclass1=000000090004&tclass2=000001051180
(※2)国立社会保障人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29年推計)報告書
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_ReportALL.pdf
■ 従来の資産形成の常識
これまでの常識だと、人生80年、60歳定年とすると、勇退後のセカンドライフ期間は20年になります。
退職一時金支給額の平均(※3)を約2,000万円、年金の所得代替率(※4)60%超とすると、退職金と年金、そしてある程度の貯蓄があればセカンドライフ資金は賄えました。
さらに1990年頃をピークとした不動産バブル以降はデフレ時代であったことを考慮すると、
積極的な運用をするより価格変動リスクを抑えた運用、日本人の個人金融資産の51.1%(2017年9月時点)を占める預貯金に預けておけば良かったことになります。
・夫婦2人の場合
<支出>
ゆとりある老後生活費(※5)35万円
<収入>
夫がサラリーマンで妻が専業主婦だった場合の年金約22万円(※6)
<不足額>
(35万円-22万円)×12ヶ月×20年間=約3,100万円
退職一時金が2,000万円とすると、貯蓄が1,100万円程度あればセカンドライフ資金は足りたことになりますね。
・単身の場合
<支出>
ゆとりある老後生活費(※5)25万円
<収入>
年金約15万円(※6)
<不足額>
(25万円-15万円)×12ヶ月×20年間=約2,400万円
退職一時金が2,000万円とすると、貯蓄が400万円程度あればセカンドライフ資金は足りたことになりますね。
退職一時金支給額の平均(※3)
厚生労働省退職給付(一時金・年金)の支給実態
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/08/3d.html
年金の所得代替率(※4)
年金を受け取り始める時点における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すもの
平成26年財政検証結果レポート ―「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」(詳細版)―http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093204.html
ゆとりある老後生活費(※5)
生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/7.html
ゆとりある老後生活費と現役男子の手取収入額とほぼ同等
単身者は夫婦2人の7割と仮定
(※6)年金受給額の目安
厚生労働省「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
■ これからの資産形成新常識
40代での資産形成新常識はこうなります
人生100年、65歳定年とすると、勇退後のセカンドライフ期間は35年になります。
退職一時金支給額の平均(※1)は約2,000万円のまま変わらないとし、年金の所得代替率(※2)40%と仮定すると、勇退前だけでなく勇退後も資産運用・資産形成が必要になってくるようです。
・夫婦2人の場合
<支出>
ゆとりある老後生活費(※3)35万円
<収入>
夫がサラリーマンで妻が専業主婦だった場合の年金約14万円(所得代替率40%の場合)
<不足額>
(35万円-14万円)×12ヶ月×35年間=約9,000万円
退職一時金が2,000万円とすると、
あと7,000万円あればゆとりと安心をもってセカンドライフが楽しめることになりますね。
・単身の場合
<支出>
ゆとりある老後生活費(※3)25万円
<収入>
年金約10万円と仮定
<不足額>
(25万円-10万円)×12ヶ月×35年間=約6,300万円
退職一時金が2,000万円とすると、
あと4,300万円あればゆとりと安心をもってセカンドライフが楽しめることになりますね。
■ 40代の資産運用・資産形成はどうしていけばいいのか
退職から20年後の80歳を中間地点とします。年利回り3.5%を目標とすると、72の法則(※6)により20年で元金はおおよそ倍になります。
仮に退職金2,000万円を元金として運用すれば4,000万円(課税前)の資産に成長しています。また、年利回り5.0%が達成できた場合は、20年後に約2.65倍になっていますので5,300万円(課税前)に成長します。
もちろん原資は退職金でなくとも構いませんので、勇退までに原資を蓄える資産形成が必用です。
現在の日本の超がつくほどの低金利からすると、3.5%や5.0%は夢のような数字だと感じるかもしれませんが、3.5%はおおよそ世界の経済成長率と同じですし5.0%は新興国のそれと同レベルです。
今後も世界経済が成長を続け、株価は経済の鏡と考えれば、年平均3.5%や5.0%の株価上昇は困難な数字ではありません。
40代の資産運用・資産形成は、勇退までを第1ステージ、勇退からセカンドライフの80歳までを第2ステージ、それ以降を第3ステージとします。
第1ステージは第2、第3ステージを見据えた資産形成をし、第2ステージは第3ステージのための資産を築く期間と位置づけ、積極的な運用をすることで、将来に渡って安心かつ充実したセカンドライフを送ることができるでしょう。
- 第1ステージ(勇退まで):第2、第3ステージを見据えて積極的に
- 第2ステージ(勇退から80歳まで):第1ステージの資産を取り崩しながら第3ステージの資産を積極的に築く
- 第3ステージ(81歳以降):効率的に運用しながら取り崩す
(※6)72の法則
お金が2倍になる期間が簡単にわかる計算式。「72÷金利≒お金が2倍になる期間」となる。
■ まとめ
これまでとは前提条件が異なること。より長寿になり、日本の人口は減少していることを考慮すると、生涯を通じて積極的な資産運用・資産形成が必用な時代になっています。
40代は退職時までの資産形成をセカンドライフ運用の第1ステージ(準備段階)と位置づけ、セカンドライフの80歳までを第2ステージ、それ以降の第3ステージに分けます。
それぞれの目的・目標を明確化し、第1ステージは第2、第3ステージのための資産形成期間と位置づけるとによって生涯に渡ってゆとりある生活をおくることが可能になるでしょう。
次回は30代の資産形成についてお話します。
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