小型株の魅力③ 高いリスクにご注意

 


積極的な株式投資

執筆者:斉藤琢也
得意分野:資産運用  

小型株はハイリスク | 綺麗なバラには棘がある

小型株には「小型株効果」と呼ばれる事象が知られています。
小型株効果というのは、「長期的に平均を取ると大型株より小型株のほうが上りやすい」という傾向のことです。
以前、店頭公開直後のヤフーを、小型株がめざましく上昇した例に挙げました。新規公開株に応募して購入できた投資家の資金が2年そこそこで957倍に膨れ上がったケースです。
別稿「小型株の魅力_小型株効果とは」

ヤフーの例ほどの驚くべき短期急騰は例外的だとしても、長期的にみて小型株のほうが大型株よりも上がりやすいのであれば、シンプルに小型株を買えば良いのではないだろうか?普通に考えれば、そのように結論付けられそうですね。しかし残念ながら、それほど単純な話ではないのです。


ものごとには表があれば裏もあります。ヤフーの例で言えば2年強で957倍になったのは事実ですが、その後のことも見ておかないと片手落ちです。

グラフ

※yahoo 分割前(週足)チャート 作図は筆者自身、Iticker使用、アプリケーション著作権者(ソフトウェア工房 REED土居浩様)からウェブでの使用許諾を頂いています。

このような急激な値上がりをした場合に、その上昇相場が終わった後は、その裏返しに今度は悲惨な暴落相場になるのではないかと、皆様も直感的に身構えるのではないでしょうか。

ヤフーの当時のチャートをご覧ください。当時の高値をつけたあと、ヤフーは23分の1に暴落しています。私が言いたいことは、もうおわかりですよね。

変動が激しすぎて実感がわかないですね。当時のヤフーは株式分割を繰り返していますので、時期を追うごとに株数がどんどん増殖していきました。前掲のチャートは分割による補正を掛けていないので、値段だけ見ていると上昇と下落の比率がわからなくなります。そこで整理すると、前掲チャートの時期に、ヤフーの新規公開株を1株70万円で購入した投資家が、ずっとそれを持ち続けたとすると、その投資家の資金は957倍まで拡大して、その後23分の1になりました。

最初に新規公開株の募集で70万円投資した人は(初値は200万円でした)957倍まで上昇したあとで23分の1になっても、それでも3000万円近くまでお金が増えています。しかし、運悪く当時の最高値でヤフーを70万円買ってしまった投資家は、その70万が3万円になってしまったことになります。

もちろん、大きな利益を得ることができた投資家もいたでしょう。しかし、一方で再起不能なほどの損失を出してしまった投資家も大勢いたはずです。直感的には大きな利益を手にした投資家よりも、大きな損失を出してしまった投資家のほうがずっと多かったのではないか、そういう印象を受けます。

なぜなら、投資家は一度利益が出た、いわば縁起のよい銘柄の取引を繰り返す傾向があるからです。そして、これほどまでに大きな上昇相場であれば、二度、三度と大きな利益を出すことも、容易だったと思われます。もう高くなったからやめておこうか、という心理的ブレーキを破壊するほどの上昇相場でした。なにしろたった2年強で1000倍近く上昇していったわけですから。そして、途中で2度、3度と利益を出すことができた投資家が高値圏に至るまで取引に参加していたケースは多かったのではないかと直感されます。

問題は天井を打ったあと23分の1になってしまった悲惨な暴落です。

株式相場は、買い方と売り方ががっぷり四つに組む商品相場や為替相場と違って、上昇相場と下落相場は全く性質が異なります。株式相場における下落相場は、上昇相場がコワレているだけ、という色彩が濃いのです。

株式相場と為替相場・商品相場の相違点や、上昇相場・下落相場の様相の違いについては少し難しい話になってきます。ここではその結果として、株式相場の場合は上昇よりも下落のスピードのほうが、通常ずっと速くなる、小型株の場合は特にその傾向が強調されがちである、ということを銘記していただくだけでよいと思います。

小型株が大天井を打った場合、下落のスピードが非常に早くなります。そのため、ただでも難しい損切りが、特に難しいものとなります。「ああ、こんなに下がってしまった!少しでも戻ったところで売ろう」、などと思っているうちに、あっという間に、とんでもない暴力的な下げに見舞われる可能性が高いのです。

株式相場は上下非対称

以下の内容は少々上級者向けです。

現金さえ持っていれば、世界中のあらゆる投資家が株式の買い手になることができます。しかし、株式の売り手はその株を既に持っている投資家か、株式を借りて空売りする投資家に限られます。

株の買い主体は買うのを見合わせて現金のまま様子をみたり、別の銘柄を買うことに切り替えることも自由自在です(空売りしている投資家は例外です)。しかし、株の売り主体はすでに購入して持っている株を売るしか選択肢がありません(空売りによる売りは例外です)。

したがって、株式相場の上昇局面と下落局面を比較すると、下落局面のスピードのほうが早くなる傾向があるのです。

株式相場の中でも、特に小型株の下落が急激になりやすい要因もあります。それは、小型株は多くの場合、制度上空売りできない、という事実です(詳細は省略します)。

空売りができない、ということは、「その株を買う以外に選択肢がない投資家」、つまり「空売りをして売り玉を抱えている投資家」が存在しないということです。小型株が大天井を打って買い手が消失すると、右も左も「その株を売る以外に選択肢がない投資家」ばかりになってしまいます。その結果、典型的な「余り物に値なし」という状態に陥りがちです。

為替相場や商品相場はその点で株式相場とは別物です。全ての相場は人間の営為であり、人間の心理は全てに共通しますからテクニカル的に共通することも多いですが、株式相場については独自の見方も必要だと考えます。
天才的な株式のトレーダー、エド・スィコータの言葉をご紹介します。後段部分は禅問答のようですが、、

株式市場は他のすべての市場と違う動きをするし、株式市場とも違う動きをする。
ジャック·D シュワッガー; 横山直树. マーケットの魔術師

ジャスダックとTOPIX及び日経平均の長期的な比較チャートをご覧いただきましょう。

グラフ

小型株の指数であるジャスダック指数は、10年で6倍以上値上がりしています。
しかし、途中の下落局面では逆にとんでもなく値下がりしている、ということが一瞥してすぐにみてとれると思います。

本稿の冒頭で、長期的にみて小型株のほうが大型株よりも上がりやすい傾向があるとしても、シンプルに小型株を買えば良い、ということにはならないと書きました。その理由は上記のチャートやヤフーの下落局面をご覧になれば、自然にご理解いただけるかと思います。

小型株の値下がりリスク(変動率・ボラティリティー)が大型株のそれよりもはるかに大きいために、小型株に高いリターンを期待できるとしても、同時にリスクを避けつつリターンだけを享受することは簡単ではありません。むしろ、大失敗してしまう可能性もあるため、細心の注意が必要になります。


関連投稿 

mag.okane-kenko.jp

mag.okane-kenko.jp


この筆者にチャットで気軽に相談ができます! 詳しくはこちらから

 


執筆者

50代 / 得意分野:資産運用

IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)斉藤 琢也

  • 資産運用

コメント日本証券アナリスト協会検定アナリスト。日々相場の囁きに耳を澄ます。日本の投資家は株を投信の倍保有しているのに販売側は易きに流れ投信一辺倒。投資家が求める情報や知識を幅広く共有したい。投資の基本から一目均衡表まで。 東大文一2度不合格、早大法卒。 ※ 相場の先達、細田悟一氏の著書「一目均衡表」は私の聖書です。
個人ホームページ「投資クリニック」
youtubeチャンネル「投資クリニック」

この執筆者に無料で相談する