金融・経済政策解説 ~令和初の「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」について~


金融経済

■総合経済対策とは

2019年12月5日に政府が総合経済対策を打ち出しました。

(参照 内閣府ホームページ

総合経済対策とは緊急的な景気浮揚や成長を目指す政策で、毎年ではなく政府が必要と判断した時に計画が立案され、予算化されます。今回は2016年の「未来への投資を実現する経済対策」以来約3年ぶりに打ち出されました。

政府の1政策ではありますが、「事業規模26兆円」と経済に与えるインパクトは非常に大きく、皆さんの資産運用に影響する部分があるかもしれません。

今回は、この「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」について解説していきます。

大きな構成は「経済の基本認識と基本的な考え方」と、その考えに基づく「取り組む施策 <三本の柱>」、そして「対策の予算規模と見込んでいる効果」となります。 

最初に「対策の規模と見込んでいる効果」から解説します。

■今回の総合経済対策の規模と見込んでいる効果

総合経済対策の規模を表す数値には、国や地方による「財政支出」と、これに民間支出も加えた「事業規模」の2つがあります。

今回の総合経済対策の財政支出は13.2兆円、事業規模は26兆円です。前回2016年8月の経済対策とほぼ同等の規模です。

こうした対策の結果見込まれる効果として、「実質国内総生産GDPを概ね1.4%押上げる」を挙げています。

ちなみに最新2018年度の実質成長率は0.6%なので、大きな効果が期待されています。

(参照 日経2019年2月の記事

■経済の基本認識と基本的な考え方

続いて、対策立案の元となる「経済の基本認識と基本的な考え方」です。

①内需を中心に国内景気は緩やかな回復基調。しかし海外リスクにより製造業中心に外需は弱含み。海外リスクが内需落ち込みにつながらないよう対策が必要だ。

そして、

②自然災害により甚大な被害が発生。自然災害対策含むインフラ整備が必要だ。

Society 5.0の実現に向け、経済の力強い成長軌道が不可欠。政策により「デフレ脱却と経済再生への道筋」を確実なものとする必要がある。

こうした課題認識のもとで、

③日本銀行の強力な金融緩和の下で思い切った財政政策を講じる。そして経済の下方リスクを乗り越え、東京オリンピック後も経済成長が持続可能であるという展望を切り拓き、民需主導の持続的な経済成長を確実に実現していくことを目指す。

という認識と考え方に則って具体的な施策が立案されています。

■取り組む施策

取組み施策には大きく3本の柱があります。

Ⅰ.災害からの復旧・復興と安全・安心の確保

Ⅱ.経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援

Ⅲ.未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上

それぞれについて紹介します。

■Ⅰ.災害からの復旧・復興と安全・安心の確保

大きく3つあります。

1.自然災害からの復旧・復興の加速

2.防災・減災、国土強靱化の強力な推進

3.国民の安全・安心の確保

 昨今多発する自然災害への対応が多く記されてされていますね。

 

1.自然災害からの復旧・復興の加速

・ 被災家屋の解体や着実な災害廃棄物処理及び土砂撤去の支援をはじめとした、災害復旧・復興につながる施策を実施することです。

2.防災・減災、国土強靱化の強力な推進

2つ挙げています。

(1)3か年緊急対策の着実な実行

大阪北部地震や北海道胆振東部地震、7月豪雨など災害が多発した平成30年度に立案され、令和2年度に3年目を迎える3か年計画 

(参照:国土交通省ホームページ

この計画については引き続き臨時・特別の場合には必要な予算措置をしながら実行していきます。

(2)水害対策を中心とした防災・減災、国土強靱化の更なる強力な推進

今年の一連の台風被害で明らかになった水害対策上の課題を中心に、来夏の台風シーズンに備え、氾濫発生の危険性が高い河川における河道掘削・堤防強化といった取組みを積極的に進めていきます。

3.国民の安全・安心の確保

災害が激甚化する中で国民の命と財産を守るため、例えば台風被害以外に文化財の防火・防災対策、災害対応用途拡大に向けたドローン基盤技術開発など、幅広く国民の安全・安心確保の施策も進めていきます。

  

■Ⅱ.経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援

米中の通商問題をはじめ、海外初のリスクに伴い内需縮小という状況が国内事業者などに与える悪影響を考慮し、対応する支援策を挙げています。主な支援の対象は中小・小規模事業者や、海外展開企業、農林水産業、地方創生関係、就職氷河期世代などです。

大きく4つ挙げられています。

 

1.中小企業・小規模事業者の生産性向上のための環境整備

雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者の生産性向上に向けた施策です。具体的に4つのテーマに分けて支援を行います。

(1)設備投資導入促進、IT・デジタル技術の実装支援

(2)中小企業・小規模事業者で働く人たちへの支援

(3)取引構造適正化の更なる推進

(4)経営者保証の解除など事業承継・事業再構築の加速化

 

2.海外展開企業の事業の円滑化

TPP11、日EU・EPA及び日米貿易協定の締結が進みましたが、こうした国々へ事業を展開する中堅・中小企業に対し、例えばきめ細かな情報提供など強力な支援を行います。 

3.農林水産業の成長産業化と輸出力強化の加速

TPP11 、日EU・EPAの発効に伴い大きく変化する我が国の農林水産業を後押しする施策として次の2つを挙げています。

(1)生産基盤の継承・強化、国際競争力の強化等

(2)戦略的な海外需要の開拓と輸出の更なる拡大 

4.地方創生の推進強化

自らのアイデアで自らの未来を切り拓く地方の取組を力強く後押しべく、次の2つを挙げています。

(1)地域経済の活性化策の一層の充実

(2)地方で活躍する人材等の強化

5.就職氷河期世代への支援

雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った、いわゆる就職氷河期世代に対して、活躍の場を広げるための施策を行います。

 

■Ⅲ.未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上

デフレ脱却・経済再生の後、中長期に成長していく基盤を作ること、そして来年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会後に向けた取組みとして6項目を挙げています。

1.Society 5.0やSDGsの実現に向けたイノベーションと社会実装の促進等

地球環境と両立した持続的かつ包摂的な経済成長のために、Society 5.0 時代の到来やSDGsの実現に向けたイノベーションや様々な変革が不可欠と考え、次の2つのテーマの具体化を進めていきます。

(1)Society 5.0の加速と社会実装

(2)SDGs実現に向けた社会変革

 

2.Society 5.0時代を担う人材投資、子育てしやすい生活環境の整備

社会実装を進めるSociety 5.0時代を担う人材を育てることはもちろん、将来を担う多様な子供たちを誰ひとり残さずに育てる環境整備を進めていきます。

 

3.外国人観光客6,000万人時代を見据えた基盤整備

2020年東京オリンピック・パラリンピック、2025年大阪・関西万博を経て2030年訪日外国人旅行者6,000万人という目標を達成するための施策を行います。

 

4.生産性向上を支えるインフラの整備

東京オリンピック・パラリンピック競技大会後も中長期の成長を支えるインフラを戦略的に整備していきます。

 

5.切れ目のない個人消費の下支え

持続的な経済成長の要はGDPの6割弱を占める個人消費。これを支えるために、企業や家計の成長期待の喚起、賃金の継続的拡大を実現すべく様々な施策を行います。

 

6.コーポレート・ガバナンス改革の推進等

日本企業の競争力・信頼性を一層高め、海外からの投資を呼び込む観点から、コーポレト・ガバナンス改革を更に進展させていきます。 

■まとめ

ざっと政府の総合経済対策について概要を見てみました。

 一読してお気づきになられましたか?

ここまでの内容の中に、あなたの資産運用を考えていく上でのヒントとなるキーワードがたくさん記されていることに。 

「自然災害への対策に予算を振り向けるのだな」

「オリンピック・パラリンピックは重要だけど、その後のことを考えた経済対策が必要と考えているのだな」

「Society 5.0やSDGsはこれからも重要なのだな」など。

 「総合経済対策」という言葉のままでは気づきませんが、中身を見ていくとこれからの投資や資産運用を考えていく際に重要なキーワードがたくさん書かれていることに気づきます。

 


安心と成長の未来を拓く総合経済対策

執筆者

50代 / 得意分野:資産運用・老後資金・相続

IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)志田正憲

  • 資産運用
  • 老後資金
  • 相続

コメント昭和39年5月生まれ。兵庫県明石市出身。 昭和63年早稲田大学商学部を卒業し大手証券会社で本社管理部門に10年勤務。 個人営業部店9年。IFA歴12年。 一番長いお客様とは20年超のおつきあいになります。 マネーアドバイスセンター株式会社  金融商品仲介業 関東財務局(金仲)第431号 マネアドチャンネル 贈与一括サービス 代表取締役 志田 正憲 〒102-0084 東京都千代田区二番町八−三 二番町大沼ビル二階

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